6 計画
6.1 リスク及び機会への取組み
6.1.1 一般
労働安全衛生マネジメントシステムの計画を策定するとき,組織は,4.1(状況)に規定する課題,4.2
(利害関係者)に規定する要求事項及び4.3(労働安全衛生マネジメントシステムの適用範囲)を考慮し,
次の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を決定しなければならない。
a) 労働安全衛生マネジメントシステムが,その意図した成果を達成できるという確信を与える。
b) 望ましくない影響を防止又は低減する。
c) 継続的改善を達成する。
組織は,取り組む必要のある労働安全衛生マネジメントシステム並びにその意図した成果に対するリス
ク及び機会を決定するときには,次の事項を考慮に入れなければならない。
- 危険源(6.1.2.1 参照)
- 労働安全衛生リスク及びその他のリスク(6.1.2.2 参照)
- 労働安全衛生機会及びその他の機会(6.1.2.3 参照)
- 法的要求事項及びその他の要求事項(6.1.3 参照)
組織は,計画プロセスにおいて,組織,組織のプロセス又は労働安全衛生マネジメントシステムの変更
に付随して,労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果に関わるリスク及び機会を決定し,評価
しなければならない。永続的か暫定的かを問わず,計画的な変更の場合は,変更を実施する前にこの評価
を行わなければならない(8.1.3 参照)。
組織は,次の事項に関する文書化した情報を維持しなければならない。
- リスク及び機会
- 計画どおりに実施されたことの確信を得るために必要な範囲でリスク及び機会(6.1.2~6.1.4 参照)を
決定し,対処するために必要なプロセス及び取組み
6.1.2 危険源の特定並びにリスク及び機会の評価
6.1.2.1 危険源の特定
組織は,危険源を現状において及び先取りして特定するためのプロセスを確立し,実施し,かつ,維持
しなければならない。プロセスは,次の事項を考慮に入れなければならないが,考慮に入れなければなら
ないのはこれらの事項だけに限らない。
a) 作業の編成の仕方,社会的要因(作業負荷,作業時間,虐待,ハラスメント及びいじめを含む。),リ
ーダーシップ及び組織の文化
b) 次から生じる危険源を含めた,定常的及び非定常的な活動及び状況
1) 職場のインフラストラクチャ,設備,材料,物質及び物理的条件
2) 製品及びサービスの設計,研究,開発,試験,生産,組立,建設,サービス提供,保守及び廃棄
3) 人的要因
4) 作業の実施方法
c) 緊急事態を含めた,組織の内部及び外部で過去に起きた関連のあるインシデント及びその原因
d) 起こり得る緊急事態
e) 次の事項を含めた人々
1) 働く人,請負者,来訪者,その他の人々を含めた,職場に出入りする人々及びそれらの人々の活動
2) 組織の活動によって影響を受け得る職場の周辺の人々
3) 組織が直接管理していない場所にいる働く人
f) 次の事項を含めたその他の課題
1) 関係する働く人のニーズ及び能力に合わせることへの配慮を含めた,作業領域,プロセス,据付,
機械・機器,作業手順及び作業組織の設計
2) 組織の管理下での労働に関連する活動に起因して生じる,職場周辺の状況
3) 職場の人々に負傷及び疾病を生じさせ得る,職場周辺で発生する,組織の管理下にない状況
g) 組織,運営,プロセス,活動及び労働安全衛生マネジメントシステムの実際の変更又は変更案(8.1.3
参照)
h) 危険源に関する知識及び情報の変更
6.1.2.2 労働安全衛生リスク及び労働安全衛生マネジメントシステムに対するその他のリスクの評価
組織は,次の事項のためのプロセスを確立し,実施し,かつ,維持しなければならない。
a) 既存の管理策の有効性を考慮に入れた上で,特定された危険源から生じる労働安全衛生リスクを評価
する。
b) 労働安全衛生マネジメントシステムの確立,実施,運用及び維持に関係するその他のリスクを決定し,
評価する。
組織の労働安全衛生リスクの評価の方法及び基準は,問題が起きてから対応するのではなく事前に,か
つ,体系的な方法で行われることを確実にするため,労働安全衛生リスクの範囲,性質及び時期の観点か
ら,決定しなければならない。この方法及び基準は,文書化した情報として維持し,保持しなければなら
ない。
6.1.2.3 労働安全衛生機会及び労働安全衛生マネジメントシステムに対するその他の機会の評価
組織は,次の事項を評価するためのプロセスを確立し,実施し,かつ,維持しなければならない。
a) 組織,組織の方針,そのプロセス又は組織の活動の計画的変更を考慮に入れた労働安全衛生パフォー
マンス向上の労働安全衛生機会及び,
1) 作業,作業組織及び作業環境を働く人に合わせて調整する機会
2) 危険源を除去し,労働安全衛生リスクを低減する機会
b) 労働安全衛生マネジメントシステムを改善するその他の機会
注記 労働安全衛生リスク及び労働安全衛生機会は,組織にとってのその他のリスク及びその他の機
会となることがあり得る。
6.1.3 法的要求事項及びその他の要求事項の決定
組織は,次の事項のためのプロセスを確立し,実施し,かつ,維持しなければならない。
a) 組織の危険源,労働安全衛生リスク及び労働安全衛生マネジメントシステムに適用される最新の法的
要求事項及びその他の要求事項を決定し,入手する。
b) これらの法的要求事項及びその他の要求事項の組織への適用方法,並びにコミュニケーションする必
要があるものを決定する。
c) 組織の労働安全衛生マネジメントシステムを確立し,実施し,維持し,継続的に改善するときに,こ
れらの法的要求事項及びその他の要求事項を考慮に入れる。
組織は,法的要求事項及びその他の要求事項に関する文書化した情報を維持し,保持し,全ての変更を
反映して最新の状態にしておくことを確実にしなければならない。
注記 法的要求事項及びその他の要求事項は,組織へのリスク及び機会となり得る。
6.1.4 取組みの計画策定
組織は,次の事項を計画しなければならない。
a) 次の事項を実行するための取組み
1) 決定したリスク及び機会に対処する(6.1.2.2 及び6.1.2.3 参照)。
2) 法的要求事項及びその他の要求事項に対処する(6.1.3 参照)。
3) 緊急事態への準備をし,対応する(8.2 参照)。
b) 次の事項を行う方法
1) その取組みの労働安全衛生マネジメントシステムのプロセス,又はその他の事業プロセスへの統合
及び実施
2) その取組みの有効性の評価
組織は,取組みの実施を計画する際に,管理策の優先順位(8.1.2 参照)及び労働安全衛生マネジメント
システムからのアウトプットを考慮に入れなければならない。
取組みを計画するとき,組織は,成功事例,技術上の選択肢,並びに財務上,運用上及び事業上の要求
事項を考慮しなければならない。
6.2 労働安全衛生目標及びそれを達成するための計画策定
6.2.1 労働安全衛生目標
組織は,労働安全衛生マネジメントシステム及び労働安全衛生パフォーマンスを維持及び継続的に改善
するために,関連する部門及び階層において労働安全衛生目標を確立しなければならない(10.3 参照)。
労働安全衛生目標は,次の事項を満たさなければならない。
a) 労働安全衛生方針と整合している。
b) 測定可能(実行可能な場合)である,又はパフォーマンス評価が可能である。
c) 次を考慮に入れている。
1) 適用される要求事項
2) リスク及び機会の評価結果(6.1.2.2 及び6.1.2.3 参照)
3) 働く人及び働く人の代表(いる場合)との協議(5.4 参照)の結果
d) モニタリングする。
e) 伝達する。
f) 必要に応じて,更新する。
6.2.2 労働安全衛生目標を達成するための計画策定
組織は,労働安全衛生目標をどのように達成するかについて計画するとき,次の事項を決定しなければ
ならない。
a) 実施事項
b) 必要な資源
c) 責任者
d) 達成期限
e) これには,モニタリングするための指標を含む,結果の評価方法
f) 労働安全衛生目標を達成するための取組みを組織の事業プロセスに統合する方法
組織は,労働安全衛生目標及びそれらを達成するための計画に関する文書化した情報を維持し,保持し
なければならない。